Editorial
新型インフルエンザウイルスワクチン治験の想定外
伊藤 澄信
1
1国立病院機構本部医療部研究課
pp.1
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100828
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インフルエンザの季節になった.インドネシアなどでトリ-ヒト感染(フェーズ3)と濃厚な接触でのヒト-ヒト感染(フェーズ4)が疑われている新型インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザ)は,通常のA型インフルエンザと同じA型なので抗原キットでは区別がつかない.東南アジア帰りのインフルエンザ患者は要注意である(潜伏期は2~8日).高病原性鳥インフルエンザH5N1型ウイルスが中国のアヒルで検出されたのが1996年,97年には香港でトリからヒトへの感染が報告された.流行地はベトナムからインドネシアに広がり,2006年4~5月にはスマトラ島でトリ型のままヒトからヒト,さらに別のヒトに広がり,H5N1型がヒト-ヒト感染を起こしやすくなっている可能性が示唆されている.
2006年9月から新型インフルエンザのプロトタイプワクチン(H5N1)の治験を国立病院機構の病院を中心に実施した.通常のインフルエンザワクチンは鶏卵に接種して培養するが,鳥インフルエンザウイルスを摂取すると鶏卵が死んでしまう.そこでベトナムで流行した鳥インフルエンザウイルス(クレード1)を遺伝子組換えで弱毒化して鶏卵に接種して培養した.現在インドネシアなどで流行している高病原性鳥インフルエンザはクレード2と呼ばれる別系統であるが,こちらのほうがよりヒト-ヒト感染を起こしやすいと予想されるため,現在はクレード2を弱毒化したウイルスでワクチン製造が開始されている.
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