今月の主題 インフルエンザ診療のブレークスルー
トピックス
新型インフルエンザワクチンの開発
来海 和彦
1
,
原田 精一
2
,
城野 洋一郎
1
Kazuhiko KIMACHI
1
,
Seiichi HARADA
2
,
Yoichiro KINO
1
1(財)化学及血清療法研究所第二研究部第三研究室
2(財)化学及血清療法研究所臨床検査センター
キーワード:
沈降新型インフルエンザワクチン
,
Clade
,
プレパンデミックワクチン
Keyword:
沈降新型インフルエンザワクチン
,
Clade
,
プレパンデミックワクチン
pp.85-88
発行日 2008年1月15日
Published Date 2008/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101500
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1.はじめに
2003年以降,現在までにWHOで把握されているヒトでのH5N1インフルエンザウイルスの累計感染者数は328人で,死亡者数は200人に達した.昨年と比較し,2007年は小康を保っているものの,インドネシアにおけるヒトへの感染はいまだに終息をみない.また,2006年は感染者ゼロであったベトナムにおいて,5月,突如としてヒトへの感染者が認められ,これまで死亡4人を含む7人の感染例が報告されている.ウイルスの多様性も富み始めており,異なる抗原性を有するH5N1ウイルスが地域ごとに発生しているのが現況である.脅威であるのは50%を超える高い致死率で,病原性は依然として衰えていない.
ワクチンは,わが国における新型インフルエンザ対策の柱の一つとして,2004年から国内ワクチン製造所により,国立感染症研究所の主導の下,国立病院機構との共同,医薬品医療機器総合機構のバックアップを受け,国家プロジェクト体制で開発が進められてきた.本年10月,このアルミニウムゲルをアジュバントとした全粒子ワクチンについて,国内2社が「沈降新型インフルエンザワクチン(H5N1株)」として製造販売承認を受けた.また,2006年には,ワクチン原液1,000万人分が備蓄され,新型インフルエンザ対策におけるワクチン施策は大きく前進した.本稿では,これまでのワクチン開発の経緯と備蓄ワクチンについて解説したい.
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