特集 医療における“物語”―Narrative-Based Medicine(NBM)
[Narrative-Based Medicineの実践例]
MSWの立場から
加茂 陽
1
,
大下 由美
2
1県立広島女子大学生活科学部
2広島大学医学部附属病院医療社会福祉部
キーワード:
現実構成
,
語り
,
スケーリング
,
外在化
,
腹痛
Keyword:
現実構成
,
語り
,
スケーリング
,
外在化
,
腹痛
pp.868-871
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100717
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Case
「腹痛で退院できない」CLの退院を支援した事例
C L:心因性疼痛で長期入院中の30代女性.
主 訴:腹痛で退院できない.
インテーク:1年近く腹痛が続き,毎日注射を打つので退院は困難だと訴えた.
アセスメント:CLの訴えは,物心両面について否定的に現実を構成していると評定された.
介入プラン:CLの現実を構成する規則を変容し,語りを再構成して解決を目指す.
結 果:全7回の面接で,CLは問題を外在化し,主体的に問題解決の語りを生成した.
ナラティブ・アプローチとMSWの仕事
MSWの援助活動は,クライアント(以下,CLとする)が解決不可能として訴える精神面と身体面の症状と,社会資源の不足の訴えという複合した語りの力を弱め,解決につながる新しい行為を選択し,実践する作業に関与することである.本論では,CLの問題提起を,他者とのコミュニケーション過程を文脈として構成されたものとみなす.さらにその訴えは,症状を軸に現実作りを意図する行為であるとも考えられる.そして,その文脈と行為の選択法および言語行為の意味づけ法が変容するならば,CLの問題提起が生じる現実構成(J1)法は再構成され,訴えられた問題は対処可能なものとして語り直され,それを前提に新しい行為の選択が始まり,問題は消失すると考える.
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