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地域志向のケア(Community-Oriented Primary Care : COPC)は,私たち,プライマリ・ケアの実践を目指すものにとっては理想とするスタイルです.健康問題に対処していく際に,診療所を利用する人だけを対象にするのではなく,職場や学校,願わくは,町村という地域社会全体にその視野を広げて,その実情に合った対応策を,地域の人々とともに検討していくプロセスです.COPCは,古くは1920年代,イギリスでの地域住民を対象とした感染症の対策や,1940年代の南アフリカでの疾病対策・衛生,栄養改善プロジェクトに端を発しますが,1980年代の初め,アメリカのInstitute of Medicine(IOM)という機関が,プライマリ・ケア機能の強化のためにその手法を具体化し,注目されるようになりました.COPCは以下の4つのステップから成り立ちます.①活動を展開する地域(Community)を定義し,その特徴を把握する.②地域が抱える健康問題を示す.③その中から早急に解決すべき問題を取り上げ,具体的な対応策を検討し実践する.④その対応策の効果を評価する1).この②のステップでは,より地域住民の生の声を反映させるために,個別面接やフォーカスグループ面接調査といった質的なデータとアンケート調査による量的なデータを組み合わせて健康問題を具体的に示し,③のステップでより実践可能な対応プログラムを住民の方と共に検討するのです.
しかしながら,COPCの実践には,いろいろな専門職種からなるチームをつくる必要があること,相当の費用がかかるわりにその報酬制度が確立していないこと,スタッフ養成のためのしっかりとしたトレーニングシステムがないことなど,多くの障害があり,十分にその良さを示し,脚光をあびるには至っていません.
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