特集 いま日常診療で注目すべき原虫症・寄生虫症
フィラリア(糸状虫)症
青木 克己
1
,
野俣 浩一郎
2
1長崎大学熱帯医学研究所寄生行動制御分野
2長崎大学大学院医学部付属病院泌尿器科
キーワード:
象皮病
,
陰囊水腫
,
乳糜尿
Keyword:
象皮病
,
陰囊水腫
,
乳糜尿
pp.248-250
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100566
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Case
腎盂内硝酸銀液注入で軽快した乳糜尿症の1例
患 者:66歳,男性.
既往歴:高血圧,糖尿病,C型肝炎.
家族歴:父が乳糜尿症.
現病歴:五島列島にて生まれ育つ.高校卒業後,漁業に従事.47歳頃より時々尿白濁を自覚し,消退,再発を繰り返していた.1998年5月頃より尿白濁の頻度が増加したため近医を受診.乳糜尿症を疑われ本院内科へ紹介,リンパ管造影(図1)上,左腎に走行する多数の拡張したリンパ管を認めたため,泌尿器科紹介となり腎盂内硝酸銀液注入を行い軽快した.その際行った逆行性腎盂造影(図2)にて,左腎杯より周囲リンパ管への造影剤のleakを認めた.
リンパ管に寄生するバンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)とマレー糸状虫(Brugia malayi)の感染による疾患をフィラリア症と呼ぶ.糸状虫成虫は雄2.5~4 cm,雌6~8 cmの糸状の線虫で,リンパ管・節に寄生する.雌成虫より産み出された仔虫(ミクロフィラリア)は220~260μmで,血中に移行し,夜間に末梢血中に出現する(地域によっては昼間でも仔虫が末梢血にみられることがある).仔虫は中間宿主となる蚊に取り込まれ,2週間で感染型幼虫に発育し,再び蚊が吸血する時,ヒトに侵入し感染する.中間宿主となる蚊の種類は地域により異なる.
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