特集 いま日常診療で注目すべき原虫症・寄生虫症
その他の吸虫症―横川吸虫症・肺吸虫症・肝吸虫症・肝蛭症
中村(内山) ふくみ
1
,
名和 行文
1
1宮崎医科大学寄生虫学教室
キーワード:
生食歴
,
下痢症
,
肝・肺病変+末梢血好酸球増多
,
検便
,
免疫診断
Keyword:
生食歴
,
下痢症
,
肝・肺病変+末梢血好酸球増多
,
検便
,
免疫診断
pp.243-247
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100565
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Case
上海ガニ老酒漬けが感染源と考えられたウェステルマン肺吸虫症の集団感染例
患 者:45歳,男性.27歳,女性.37歳,男性.16歳,男性.
現病歴:患者の1人が経営する中華料理店で,上海ガニ老酒漬けを一緒に食べた.4人のうち3人は,カニを食べてからおよそ1~2カ月後に咳嗽,呼吸困難などの呼吸器症状を訴え,いずれも胸水貯留および末梢血好酸球増多を認めた.もう1人はとくに症状はなかったが,学校の検診で胸水貯留を指摘された.喀痰や便から虫卵は検出されなかった.食歴,症状,画像所見および宮崎医大寄生虫学での免疫診断の結果(dot-ELISA法:抗ウェステルマン肺吸虫抗体強陽性)からウェステルマン肺吸虫症と診断された.プラジカンテル75 mg/kg/日,3日間の投与で症状・画像所見の改善,抗体価の低下をみている.
(淀川キリスト教病院呼吸器科より症例提供)
ここで取り上げる横川吸虫症,肺吸虫症,肝吸虫症,肝蛭(カンテツ)症は,現在も国内で患者が発生しており,日常診療で遭遇する可能性のある吸虫症である.これらの吸虫症は,臨床症状や画像所見から悪性腫瘍や他の炎症性/感染性疾患と間違われることがあり,鑑別が重要である.時には,寄生虫感染症が念頭にないために不必要な検査・治療が行われることもある.
本稿では,どのような時にこれらの吸虫症を疑い,どのように検査・治療を進めるか,寄生虫学的事項も併せて概説する.
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