増刊号特集 泌尿器科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
1 尿路・性器の感染症
寄生虫感染症
リンパ系フィラリア症
鶴﨑 俊文
1
1日本赤十字社長崎原爆病院泌尿器科
pp.51-54
発行日 2016年4月5日
Published Date 2016/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205589
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
疾患の概要
リンパ系フィラリア症は,Wuchereria bancrofti(バンクロフト糸状虫),Brugia malayi(マレー糸状虫),Brugia timori(チモール糸状虫)の3種類のいずれかによる感染症である.その90%以上はバンクロフト糸状虫が関与している.蚊が感染した宿主(人)を刺してミクロフィラリア(小幼虫)に感染し,蚊の体内で感染性を持つ幼虫となり,感染した蚊が人を刺すことで体内に侵入し,さらにリンパ系に移動し成虫となり,何千ものミクロフィラリアを生み,感染伝播のサイクルを循環させる.現在,アフリカや東南アジアなどを中心に世界の58か国で1億2000万人以上が感染し,約4000万人がこの疾患による外観の変形,機能障害を患っている.日本では新規の患者の発生はないが,海外で感染した症例や,以前感染し慢性期の症状を有する症例は少数存在する.
リンパ系フィラリア症は,無症候期,急性期,慢性期がある.急性期は細菌の二次感染に関連する発熱や,リンパ管炎・リンパ節炎などを起こし,慢性期には四肢・乳房・生殖器のリンパ浮腫から象皮病を起こす.特にバンクロフト糸状虫では乳び尿(または血乳び尿)やフィラリア性(乳び性)陰囊水腫を来すこともある.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.