プライマリ・ケアのリスクマネジメント[最終回]
異状死体の届出
長野 展久
1,2
1東京海上日動メディカルサービス
2東京医科歯科大学大学院医学総合研究科司法医学
pp.690-694
発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100142
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異状死体の概要については,医学部学生時代の講義(法医学)で,「異状死体とは,外因死(不慮の事故死・自殺・他殺・その他)や死因の明らかでない死体,または死亡前後の状況に異常がある死体」ということを学びました1).ところが,ますます加熱する医事紛争の影響により,異状死体の考え方そのものが大きく変化したばかりか,異状死体の届出に関する明確な基準がないために,臨床現場では相当な混乱をきたしています.
具体的には,異状死体の届出を24時間以内に行わなかったとして医師法第21条に違反するとされたり,あるいは,死亡診断書に虚偽の記載(医療過誤による死亡であるのに『病死および自然死』と記入)をしたことで虚偽診断書作成罪(刑法第160条),または虚偽公文書作成罪(刑法第156条)にあたるとして,医師が刑事罪の罪に問われる危険性が増えてきました.
連載の最終回では,異状死体の考え方を大きく変えることになった重大な事件をご紹介します.担当医師は間違った医療行為をしていないにもかかわらず,死亡後の対応をめぐって刑事告訴され,最高裁判所で実刑判決が確定しました.その内容をみると,臨床に携わるすべての医師にとって決して他人事とはいえません.患者の死亡診断にあたっては,異状死体のことを常に念頭に置いた対応が望まれます.
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