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◆痛風は古くから知られている結晶誘発性の関節炎の原因の1つであり,治療が発達した現在では痛風発作以外に合併症は少ない.しかし,放置すると骨・関節に障害を残すこともある.
Case
患者:45歳,男性.トラック運転手.
主訴:発熱および関節痛. 既往歴:①20歳代後半に痛風を指摘,②交通事故にて左肘関節骨折(8年前).
生活歴:飲酒歴;焼酎(泡盛)5合/回を1~2回/週.喫煙歴なし.
家族歴:父親が肺気腫,痛風の家族歴なし.
現病歴:20歳代後半に左足母趾と両膝関節痛で近医を受診し,痛風と診断されるも放置.以後,詳細は不明だが関節痛の際には非ステロイド抗炎症薬を自己判断にて頓用していた.次第に両肘関節,両手関節,両手指関節,両膝関節,両足首および両足趾の変形と皮下結節を認めるようになった.
入院3日前より発作性に両足関節痛を生じ,その後,肘・手・膝関節と全身の関節に同様の痛みが拡大した.さらに39℃台の発熱も認めるようになった.とくに悪寒戦慄はみられず.しかし,非ステロイド抗炎症薬を使用するも関節痛は改善せず,体動も困難となり当院救急室へ搬送となった.
入院時現症:血圧160/90 mmHg,脈拍110/分,呼吸数25/分,体温39.2℃.全身状態;中等度苦悶様,頭頸部に異常なし,心音は整で収縮期駆出性雑音がわずかに聴取,呼吸音は静で左右差なし,腹部は平坦・軟で肝脾腫を認めない,泌尿器に異常を認めず,四肢は両側肘・膝関節,指趾に多発性結節(表面不整,弾性硬,局所の圧痛・発赤・腫脹・変形)(図1).
検査所見:血算;WBC 14,400/μl,RBC 395×104/μl,Hb 11.5 g/dl,Hct 33.5%.生化学検査;Na 133 mEq/l,K 4.4 mEq/l,Cl 93 mEq/l,BUN 39 mg/dl,Cre 1.4 mg/dl,T-bil 2.7 mg/dl,AST 46 IU/l,ALT 47 IU/l,ALP 675 IU/l,LDH 182 IU/l,TP 6.0 g/dl,Alb 3.0 g/dl,UA 11.8 mg/dl,Glc 107 mg/dl.一般尿検査;比重1.014,pH 6.0,pro(2+),Glc(-),occult blood(2+).尿沈〓;赤血球5~9/hpf,顆粒円柱1~2/hpf.
心電図:正常範囲内.
胸部単純X線写真:異常なし.
腎尿管・膀胱部単純撮影:若干の腰椎の変形を認めるが,その他異常なし.
卒後2年目の初療医は,救急室を訪れるレベルの痛風発作による足母趾や膝関節の単関節炎の経験はあったが,多関節炎であったことや骨・関節の著明な変形および皮下結節があったため,上級医に今後の鑑別診断や治療方針についてコンサルトした.
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