法医学からみえる"臨床"・4
異状届は誰がするのか―異状届は医師自らの責任のはず
高濱 桂一
1
Keiichi Takahama
1
1宮崎医科大学法医学教室
pp.418-419
発行日 1991年7月15日
Published Date 1991/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900130
- 有料閲覧
- 文献概要
事例 198〇年6月14日民事事案.
前年12月末の昼過ぎ,僻村の診療所に重症の外傷患者が運び込まれた.患者は既に意識がなく,左側胸部を中心に広範な肋骨骨折と左下肢の骨折,それに頭部に擦過傷があり,挿管により補助呼吸など診療所として可能な限りの治療を行ったが約1時間余りで死亡した.搬入して来た関係者の説明では自損による交通事故とのことで,患者の家族には事故死であるから警察に連絡するよう申し渡したうえで,死亡診断書を交付した.遺体はその日の夕方,自宅で通夜をとり行うからと運び出されていった.ところが数日後,警察に事故の連絡があったのは遺体の火葬が済んだ後であったこと,事故の全容がはっきりしないのでこれから捜査に着手することを警察から知らされた.一方,死者の生命保険金の支払いについて生保,損保の各社は事実の確認を求め,弁護士を介し法医学教室に鑑定を求めてきた.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.