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◆尿路結石症を疑う際の検査としては,腹部超音波検査をまず行い,結石の部位と大きさ,水腎症の程度などを確認する.鎮痛薬が無効なほどの疝痛発作では,画像診断での腎周囲所見に留意して腎盂外溢流にも考えを及ばせる.
症例呈示
患者:73歳,女性.無職(別荘暮らし).元主婦.
主訴:食後の嘔吐.
既往歴・家族歴:特記事項なし.
現病歴:2004年7月1日夕食後より嘔吐が出現したため,その日の夜10時に救急外来に来院した.吐物には血混なし.生ものの摂食などなし.腹痛や便秘・下痢などの症状もなし.
身体所見:血圧160/110 mmHg,脈拍95 /分・整,呼吸数20/分,体温36.7℃.意識状態清明.歩行障害なし.腹部平坦・軟,腸蠕動音良好,圧痛なし.両側背部に叩打痛なし.
検査所見:末梢血;WBC 5,600/μl,Hct 40.0%,PLT 72,000/μl.生化学;BUN 13.0 mg/dl,Cr 0.59 mg/dl,Na 139 mEq/l,K 3.2 mEq/l,Cl 101 mEq/l,BS 142 mg/dl,AST 28 IU/l,ALT 25 IU/l,LDH 259 IU/l,ALP 168 IU/l,γ-GTP 39 IU/l,Amy 64 IU/l,CRP 2.65 mg/dl.尿一般;pH 9.0,糖-,蛋白±,潜血+1,ビリルビン-,ウロビリノーゲン±.
急性胃腸炎を第一に考え,補液を行って経過観察をした.しかし,徐々に左側腹部に強い痛みが出現したため腹部超音波検査を行ったところ,左側に軽度の水腎症を認め,左尿管結石症と診断した.結石や腎周囲の無エコー域は確認できなかった.腎尿管膀胱単純撮影(KUB)においては,左L3/4椎体間に8×8mmの尿管結石,左腎結石を認めた(図1).また,腹部単純CTにおいて左腎周囲に水成分の漏出がみられ,腎盂外溢流と考えた(図2).さらに,超音波検査中より悪寒戦慄,熱発,鎮痛薬無効の痛みが現れはじめた.急激な病態の悪化を疑って入院とした.
入院後経過:翌朝に血圧73/43 mmHg,脈拍111 /分,体温39.1℃.WBC 27,800/μl,PLT 46,000/μl,BUN 15.9 mg/dl,Cr 0.69 mg/dl,AST 78 IU/l,ALT 74 IU/l,CRP 24.86 mg/dl,PT-INR 1.2,APTT 41sec,FDP 73.54μg/dlと,急速にdisseminated intravascular coagulation(DIC)に進展し,感染症の併発を考えた.水腎症は軽度で腎瘻造設は困難と考え,緊急的に逆行性尿管カテーテル挿入を行った.術中に左尿管嵌頓結石は腎盂尿管移行部に押し上げられたが,カテーテルの挿入はスムースに可能であった.また,同時に行った逆行性腎盂造影(RP)では漏出は再現されず,破裂ではなく溢流と確定した.集中治療によりDICは回復し,体外衝撃波砕石術(ESWL)の施行となり,腎結石とあわせて無事砕石された.
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