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2004年10月23日,筆者は新潟中越地震により被災した.直後から数カ月間,自らの生活と医院機能の立て直し,そして医師会員として地域活動に奔走した.気が付けば1年が経とうとしているが,焦燥と疲労のなかで明け暮れた多忙な日々を要約するのは困難で,今少し時間が必要だ.ここでは被災地でプライマリ・ケア医が何をなすべきか,どのような支援を必要とするか,事前にどのような準備が必要かなどに絞って検討したい.
まずは安全確保と情報収集
被災地での行動を経時的に整理した(表1).被災直後にまず大切なのは,自身と家族の安全確保である.この前提がなくては医療活動に支障が出る.避難ができたら,ざっと診療所の被害程度を見渡して,診療が開始できる状態かどうか判断し,使えそうな機材や医薬品を確保する.これで自己単独で可能な医療活動のレベルが決定される.次に情報収集,近くの医療機関が機能しているかを把握することは重要で,患者や負傷者が自己の手に負えないと判断したら転送を手配できるようにする.
診療所が立ち上がると日常診療と被災下医療が開始される.案の定,常用薬を切らしたがいつもの医療機関に行けない人々がやってきて多忙を極めた.処方した薬剤が院外薬局の在庫になくても同効薬を探して書き直す余裕はなく,薬局に相談して奔走してもらった.避難途中も,患者や負傷者が押し寄せたら対応できないのではと不安であったが,実際には直後はそれほど医療要請がなかった.後に医師会の調査でわかったが,医院にはどこも半日くらい経ってから徐々に医療要請があり,また幸い軽症者が多かった.つぶれた家の下敷きや熱傷など,住民同士が協力して救助し病院の救急外来に搬送したらしく,いざとなれば住民自ら直観的に医療機関を使い分けるようだと認識した.
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