Editorial
目と老化
伊藤 澄信
1
1順天堂大学臨床薬理学/総合診療科
pp.1
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100025
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寄る年波には勝てないもので,眼鏡をかけたままでは近くの字が見えなくなってきた.普段は老化を実感していなくても,車の運転時,眼鏡をかけかえるたびに年をとったことを自覚させられる.
医療面接の講義の際,黄色のサングラス,耳栓,手袋を用意した.インスタント高齢者となった医学生がPTP包装の薬を取り出す実習である.黄色のサングラスをすると白い錠剤と薄い色の錠剤の区別はつかない.厚い手袋をするとPTPの錠剤は取り出しにくい.1日3回,数種類の薬を飲むのがいかに困難なのかが実感できる.患者のアドヒアランスを悪化させる原因の1つである.耳栓をしていると,普通の大きさの声はまるで外国語のごとくわかりにくい.私が米国でレジデント研修の際にしたこの体験実習は新鮮であったが,看護の領域ではゴーグルだけでなく足におもりをつけ,関節の動きを制限する装具をつけて高齢者体験をする教育が一般的になっている.患者の苦痛を体験すると,患者に優しくなれるかもしれない.
産業医の実地研修でウォーキング,簡易体力チェック,リラクセーションを体験した.ウォーキングする前に「目隠しその場足踏み」テストをした.目をつぶったまま,その場で100歩足踏みをする.平衡感覚のテストとのことだが,10歩ごとに30 cmぐらい前に出ていってしまって,危ないとストップをかけられてしまった.テレビ番組によると,隠れ脳梗塞発見のテストだそうである.隠れ脳梗塞とは思いたくない患者の心理がよくわかる.
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