増刊号特集 泌尿器科手術における合併症管理のすべて
Ⅳ.術後合併症とその管理
4.消化管系
排便障害
宮川 美榮子
1
Mieko Miyakawa
1
1島田市民病院泌尿器科
pp.302-304
発行日 2001年3月30日
Published Date 2001/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413903241
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1 はじめに
回腸末端,回盲部を切除すると慢性の下痢になるといわれている。しかし,腸管利用の尿路変向術が一般的な今日の泌尿器科手術で,排便障害に困った経験があるだろうか。文献的にも排便障害の報告はほとんどみあたらなかった。しかし最近の報告1)では,回腸導管や回腸による膀胱拡大術を行った症例(153例)で,術前に正常の人でも42%に排便障害が出現し,右半側の大腸切除をすると50%以上,回盲弁を含めた切除ではすべて下痢になるという報告もある。しかも3か月以内にIE常排便機能に戻るのは35%,3年以上の経過でもとに戻らぬものも30%あるという2)。一方,症状は6か月以内に出現し,1年以内に多くは消失するという報告もあり1),使用腸管の長さ,術後経過観察期間の長短と症状との関係は明らかではない。
Studerら3)は同腸膀胱80例を6年間観察し,この間は問題なかったが,さらに長期間の経過観察により障害の有無をみる必要性を述べている。排便障害の症状も便秘と下痢(軟便,水様便)のみならず,排便回数の増加,便失禁,夜行性下痢,ガス漏れ,切迫排便,爆発性の下痢など様々な状態を含めての調査が必要であり,腸切による吸収障害と尿吸収に伴う代謝性障害の両面からの観察が要求される。
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