外科医局の午後・51
真夏の出来事から
岡崎 誠
1
1市立伊丹病院外科
pp.1563
発行日 2008年11月20日
Published Date 2008/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102369
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ここ2年間は真夏に色々な出来事が家族の身に起こった.2年前には私が検診で異常を指摘されて検査入院となり,腰椎麻酔で生検を受けた.昨年は妻が急性腹症で緊急入院をした.今年は大丈夫かなと思っていたら,おやじが急に倒れて救急車で搬送された.救命はできたが,認知症が進んで介護生活となってしまった.他人事と思っていたことが,ついにわが身にも生じてきた.考えれば,人間は誰でもいつかは病に倒れ,いずれは死ぬという当たりまえのことが起こったにすぎないのかもしれない.
さて先日,以前から非常に注目されてきた福島県立大野病院の産婦人科医の事件の判決がなされた.結果は無罪であり,医療関係者としては当然と思う反面,遺族や他方面の人たちの反応を聞いていると,ことはそう簡単なことではないということが種々の報道から実感させられる.医療という非常に不確実な分野で,しかも患者を救うために懸命になって医療をして,結果がおもわしくないからといって刑事罰的な「裁判」にかけられるようなことはとんでもないし,このようなことが起こるのならば医療の委縮となり,またさらに医療崩壊が進むし,実際に産科の分野ではこの事件をきっかけに崩壊が起こったというのが大方の医療関係者の言い分である.一方,医療分野だけが特殊に保護されるべきというのは医療のおごりであり,過失的なことが生じれば警察が介入するのは当然であるという意見も多い.
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