交見室
治療法の選択の重要性,他
赤座 英之
1
1筑波大学臨床医学系泌尿器科
pp.525-527
発行日 1995年6月20日
Published Date 1995/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901543
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近年の臨床医学の進歩には著しいものがある。泌尿器悪性腫瘍の治療においても例外ではない。精巣腫瘍においては,stage ⅡBやⅢといった進行した症例においても,現在では完全治癒を目指した化学療法が一般に行われている。反面,それでも完全寛解に至らない症例や再燃例に対する治療法については手術や放射線療法など多様な治療が考慮されるが確立されたものは無く,現場で実際に治療にあたる者(医師,患者の両者)にとって治療法の選択に苦慮するところである。
前立腺癌については,マス・スクリーニングがPSAの測定によって一段と一般化されつつあり,日本においてもstage C以下の症例が増加しつつある。TNM分類のT1cに属する症例も増加し,これら超早期に属する症例に対して根治的前立腺摘除術の適応についても議論が起こっている。これらの症例の中には,潜在癌も含まれる可能性が高いからである。また,進行癌に対する内分泌療法も日進月歩をとげ,選択の幅が広がる一方である。LH・RHアゴニストはエストロゲンの副作用や除精術の精神的影響を克服したが,コスト(治療)の上昇を招いた。新しい非ステロイド系抗アンドロゲン剤の登場は単剤で用いた場合,libidoの低下やインポテンスを防ぎQOLの維持には最適の治療法を可能にするかもしれない。
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