日本泌尿器科臨床史・16
高野長英と泌尿器科学—その3—『結石ヰーグド論』をめぐって
友吉 唯夫
1
1滋賀医科大学
pp.622-623
発行日 1992年7月20日
Published Date 1992/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900641
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高野長英が泌尿器科学に寄せた関心の深さは,前2回の拙稿でもおわかりいただいたことと思うが,なかでも石淋(尿石症)は長英が最もよく研究していた疾患である.その勉強の成果が,今回紹介する『結石ヰーグド論』である.
長英は1830年,27歳のときに江戸で医業を開業し,何人かの弟子を教育するとともに,『医原枢要』をはじめとして多くの蘭書を訳述した.その充実した開塾時代の著作の一つとしての『結石ヰーグド論』が,のちの下獄のさいに官による没収を免れて,陸前の国渡ノ波出身の門人遠藤医師の保存するところとなった.長英真筆の20ページの小冊子であるが,図のように文中自由に加筆修正がなされていて,欄外の書き入れも随所にあり,その筆跡はかなり読みにくく,判読しがたい字句も少なくない.
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