日本泌尿器科臨床史・15
高野長英と泌尿器科—その2
友吉 唯夫
1
1滋賀医科大学
pp.530-531
発行日 1992年6月20日
Published Date 1992/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900619
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前号でとりあげた『医原枢要』が,高野長英(1804〜1850)の基礎医学の代表的著書とするなら,ここに紹介する『居家備用』は臨床医学の代表作ということができる.この書は『医原枢要』と相前後して脱稿したとされているから,長英はまだ30歳になっていなかった(高野長運『高野長英傅』1971,岩波書店).これは全身の諸疾患について,定義,原因,診断法,治療法を詳細に解説した翻訳医書であるが,原著者は遠西暗厄利亜の律暹爾獨羅としるされ,日本東奥の高野譲長英訳と併記されている.長英はもともと水沢藩の家臣,後藤家の三男として生まれ,母方の蘭方医高野玄斎の養子になったのである.
さて『居家備用』という書名はちょっとかわっている.「居家」は医家を指すのであろうが,もともと居家という語はない.役人にならずに家に居ことを家居(かきよる)というが,自宅で開業している医師という意味を兼ねているのであろう.「備用」は座右に置いて活用する書物ということである.このなかから泌尿器科臨床に関係のある記載のいくつかを,現代訳して紹介してみよう.ただし一部の用語と表現は原文のままにしてある.
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