ものがたり・日本の医学・事始・7
高野長英
しまね きよし
1
1“思想の科学”
pp.85-87
発行日 1967年7月1日
Published Date 1967/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913220
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ケンペルとツンベルグの著書が与えた影響
蘭学の歴史をたどるときに,どうしてもシーボルトを除外することはできない。
シーボルトのまえに来日した学者に,ケンペルとツンベルグがいたが,ケンペルが「日本史」を著わして,日本の歴史や地理・風俗を学問的に世界に紹介したのにたいして,ツンベルグは「日本植物誌」や「日本動物誌」を著わして,日本の動植物を世界に紹介した。ケンペルの「日本史」はモンテスキューの「法の精神」,ボルテールの「国情民俗論」やカントの「永久平和論」に引用されている。当時のヨーロッパにおける学者たちが,まじめに日本をとりあげようとするときには,ケンペルの「日本史」をテキストにするしかなかったのである。ケンペルはこのなかで,とくに「鎖国論」を書いて,幕府の鎖国政策を批判しているが,実証主義的な分析方法と,日本を世界のなかで見ていこうとする広い視野とをもったケンペルの「日本史」は,各国語に翻訳されて,広く読まれた名著である。
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