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コロナ禍は一向に収まりそうもありません.今日テレビを見ていたら,“新型コロナウイルス「世界初」の再感染”との報道がありました.香港在住の患者が2回コロナに感染し,感染した1回目と2回目のウイルスの株が異なるとのことです.コロナウイルスは変異株を増やしながら凄まじい勢いで世界中で猛威を振るってきましたが,ウイルスの立場からすれば,生き残るための環境に適応する手段なのかもしれません.そういえば,私たちが日常診療で治療する腎癌や膀胱癌や前立腺癌も,遺伝子変異によって薬物治療に抵抗し続けます.
小学生の夏休みに毎年「ひとり一研究」という宿題を課せられました.理科の実験や観察を自宅で行ってまとめるという宿題です.私は「あげはの観察」を行うことにしました.アゲハチョウにはさまざまな種類がいますが,いわゆるアゲハ(ナミアゲハ)は,みかんや柚などの柑橘類の葉に卵を産み,幼虫はその葉を食べて成長していきます.一方,キアゲハの幼虫はパセリやニンジンの葉を食します.クロアゲハの幼虫はアゲハと同様に柑橘類の葉を食しますが,アオスジアゲハの幼虫はクスノキ科植物を食草とします(ちなみに,アオスジアゲハの羽は鮮やかなパステルカラーに透き通り,飛ぶ姿は優雅で美しく私がもっとも好きなアゲハです).同じアゲハにもかかわらず,種類によって幼虫の食草が異なるのは非常に興味深いことです.そこで小学生のとき,パセリを食するキアゲハの幼虫に,飼育箱の中で柑橘類の葉のみを食べさせ観察することにしました.結果は40年以上も前のことで定かではありませんが,確かやせ細りはしたものの,キアゲハの幼虫も柑橘類の葉を食し,成虫になったと記憶しています.大げさな言い方ですが,おそらく進化の過程でアゲハから遺伝子変異して生まれたキアゲハも,遥か遠い過去の記憶を蘇らせ,瞬時に環境に適応したのだと思います.
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