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編集後記
小島 祥敬
pp.286
発行日 2017年3月20日
Published Date 2017/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205896
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“ちょうど8年前”,ロボット支援手術の勉強のため米国に留学していました.朝6時過ぎからのカンファレンスに間に合うため,毎朝午前5時前には起床し,朝食を一気にかきこんで,自転車を走らせて病院に向かいました.そのため,1件目の手術が終了した午前11時過ぎ頃にはすでに空腹を感じ,少し早い昼食をガラガラの食堂で食べることが日常でした.しかし,1年弱の留学中に,ただ一度だけその時間に食堂が超満員となり,異様な雰囲気に包まれた日がありました.2009年1月20日のオバマ新大統領(当時)の大統領就任演説の日です.
食堂に集まった聴衆の多くは黒人で,テレビに映し出される演説を固唾を呑んで見守り,歓声がわき,涙を流す人や嗚咽する人などもいて,彼ら彼女らにとっては特別な日であったことを鮮明に覚えています.この国が抱える複雑な社会構造を垣間見た瞬間でした.オバマ前大統領が任期中に,米国にそして世界にもたらしたものは,私のような凡人には評価することなどできません.しかし,少なくてもあのとき,多くの米国人のみならず,世界の人々が,新しいリーダーを受け入れ,彼の“Yes, We Can”の合言葉に共感したことは間違いのない事実ですし,多くの人々に勇気と希望を与えました.そして,diversityを受け入れる世の中になったのだと実感したような気がします.
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