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23年前,医師になって2週間目に私が初めて当直をしたときの話です.真夜中にナースコールを受けて,術後嘔吐の患者さんを診察しました.いろいろなことを頭のなかで巡らせながら,不安な気持ちで当直室から病棟に向かったことを覚えています.病室に着いてすぐに,看護師さんから汚物を懐中電灯で照らしながら「これです」と平然とした顔で言われ,どうしたらよいのかわからず一瞬茫然としました.患者さんに「ご気分はいかがですか?」と問いかけたところ,「吐いてからすっきりしました」と答えていただき,内心ホッとして,「それでは様子を見ましょうか」と告げ当直室に帰りました.当直室に帰ってから,この患者さんに何が起きたかわからず,当直マニュアルなる本を読み,しばらく病態や対処法を確認してから床に就きました.翌早朝に,その患者さんの元気な顔を拝見し,また上級医に報告したところ「大丈夫,大丈夫」と言われ,やっとストレスから解放された気分になれたことが昨日のことのように思い出されます.
医学部を卒業して直入局する当時とは異なり,現在は初期研修2年間でプライマリ・ケアを学んでいるので,この特集を手にしている後期研修医の皆さんは,当直業務の基本的な心構えや対処法は身につけていることと思います.したがって,私のような素人のような経験はしないと思いますが,入院患者の病状の変化は,泌尿器科特有のものも少なくなく,不安に思うこともあるでしょう.そこで先月号の〈外来編〉に引き続き,「この1冊で安心!泌尿器科当直医マニュアル〈入院編〉」と題し,特集を企画させていただきました.〈外来編〉と同様,緊急時にも簡単に目を通すことができるように構成を工夫しました.先月号の〈外来編〉とセットで枕元に置いていただき,安心して当直業務が行えるための一助となることを願っています.
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