増刊号特集 泌尿器科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
9 腫瘍
標準治療
転移性腎細胞癌
高橋 正幸
1
,
金山 博臣
1
1徳島大学大学院医歯薬学研究部泌尿器科
pp.167-171
発行日 2016年4月5日
Published Date 2016/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205630
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疾患の概要
腎細胞癌は,成人の癌の2〜3%を占める.近年,他疾患におけるCT検査の機会の増加や検診により早期癌の発見が増えているが,進行癌も増加し,死亡数も増えている.危険因子として喫煙,肥満,高血圧などが報告されている.初診時に約30%に転移があり,限局性腎癌においても根治的腎摘除術後,約30%に再発が出現する.転移部位は肺,リンパ節,骨に多い.病理組織型は,淡明細胞型腎細胞癌が最も多く約80%を占め,乳頭状腎細胞癌が10〜15%,嫌色素性腎細胞癌が5%程度に認められる.集合管癌(ベリニ管癌)は頻度が低く,1%未満である.腎細胞癌のうち2〜3%は家族性である.そのなかで,von-Hippel Lindau(VHL)病が代表的な遺伝性疾患で,淡明細胞型腎細胞癌,中枢神経系の血管芽腫,褐色細胞腫などが発生する.散発性淡明細胞型腎細胞癌においても約70%にVHL遺伝子の突然変異やメチル化の異常が観察される.
原発巣による症状は,早期癌では通常認めない.局所進行癌では,尿路に浸潤し血尿をきたすことがある.また,腫瘍の増大に伴い,側腹部の疼痛や腹部腫瘤を触知することがある.転移性腎癌では,それぞれの転移巣による症状が出現する.全身症状として,発熱,全身倦怠感,体重減少など,さまざまな症状が出現する.特に体重減少,発熱,急性炎症反応(血沈,CRP陽性)を伴ったいわゆるparaneoplastic inflammatory syndromeを呈する症例では急速に進行し,予後不良の場合が多い.
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