Japanese
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特集 尿流動態検査の実際
排尿障害患者に対する神経学的アプローチ
Neurological Approach to Patients with Voiding Dysfunction
服部 孝道
1
Takamichi Hattori
1
1千葉大学医学部神経内科
pp.673-676
発行日 1987年8月20日
Published Date 1987/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204547
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はじめに
排尿機能は複雑な神経系の働きによつてコントロールされており1),これらの神経系が障害されると神経因性膀胱とよばれる排尿障害がおこる。神経因性膀胱は他の原因による排尿障害と異なり,神経障害によつて生じた一つの症状であるという特色がある。すなわち,神経因性膀胱における頻尿,尿意切迫,尿失禁,排尿困難といつた症状は,手足の運動麻痺や知覚障害と同様に神経症状であるということである。したがつて,神経因性膀胱の治療はあくまでも対症療法にすぎず,原因疾患の治療が別にあることになる。原因究明の重要性および神経疾患に対する治療で排尿障害の改善する可能性を考えると,排尿障害患者をみた場合には神経因性膀胱の可能性を常に念頭におくべきである。第1表に原因疾患の治療で排尿障害が改善し得る主な神経疾患を示す。
泌尿器科医を訪れる神経因性膀胱患者は大きく分けて2群に分けることができる。1群は排尿障害が神経疾患によることを患者自身が認識していない場合であり,他の群は脳卒中,外傷性脊髄損傷などのように明らかな神経疾患があり,排尿障害もそのためであることがわかつている場合である。前者の場合は排尿障害の治療方針をたてるだけでなく,原因疾患をみつけるための積極的な神経学的アプローチが必要であり,後者の場合は神経疾患の診断がついているので,泌尿器科医は排尿障害の治療方針をたてる上でのアプローチが必要である。
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