手術手技
追加発言 2
有吉 朝美
1
Asami Ariyoshi
1
1福岡大学医学部泌尿器科学教室
pp.998
発行日 1985年12月20日
Published Date 1985/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204182
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陰茎癌に対するリンパ節郭清は機会の少ない手術であるが,著者らは"豊富"といつてもよい経験をもとに実際的な手技を述べておられ,とくに合併症予防のための配慮が行き届いていることに敬意を表している。私の経験は,陰茎癌11例中5例に郭清を行つたにすぎないので,偏つた見解を述べる可能性があることをお断りしておきたい。
まず,本郭清術は,徹底的に行うほど術後合併症や後遺症に悩まされるものである。本文にも述べられているごとく,縫工筋による被覆,Camper(またはScarpa)浅筋膜までの皮下脂肪層の温存,さらに鼠径靱帯に並行する皮切の採用1)などによつて,かかる合併症の減少がみられることは確かである。なかでも皮膚壊死は手術の失敗のように思われて厭なものであるが,もし発生したら植皮によつて遷延させることなく解決した方がよい。問題は下肢の浮腫である。術後の弾力繃帯,下肢挙上,安静などでかなり軽減できるが,腸骨リンパ節を含む徹底的郭清のあとでは下肢浮腫は必ず出現し,放置すると結合織増殖による象皮化,刺すような疼痛の出現,紅皮症様皮膚変化なども出現し生活に支障を来す。郭清範囲を狭めれば浮腫を防ぎうるが,それでは不十分な場合もあろう。
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