Japanese
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特集 尿路性器癌の化学療法
腎癌の化学療法
Chemotherapy of Renal Cell Carcinoma
里見 佳昭
1
Yoshiaki Satomi
1
1横須賀共済病院泌尿器科
1Department of Urology, Yokosuka Kyosai Hospital
pp.457-464
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203819
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まえがき
腎癌(renal cell carcinoma)の治療の主体は,他の多くの癌と同様,手術療法であり,化学療法はあくまで補助的治療手段と考えられている。しかし,腎癌の経過を観察すると,初診時既に30%内外の症例に転移があり,5年以内に56%,そして10年で72%に転移が出現して来る非常な予後の悪さを示している1)。更に,著者の333例の臨床統計ではstage Iでも10年実測生存率は54%であり,治癒手術をしたと思われる症例でも決して安心ならないことを教えている。すなわち,腎癌患者の4人中3人は転移巣の治療に直面するわけで,化学療法の効果を向上させない限り,腎癌の遠隔成績は悪い状態を続けることになる。腎癌の治療成績の向上のためには,化学療法の検討こそ急務であり,最重要課題である。
現実には,残念ながら腎癌の化学療法は十分に検討されておらず,これは症例数が比較的少ないためおよび有効な化学療法剤がないためによると思われるが,化学療法の絶望的な癌の代表格に見られている。しかし,絶望視するのは誤りであり,最近,有望な化学療法剤も出現して来ており,積極的な化学療法が十分な成果をあげる時期が到来したと考えている。
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