講座
泌尿器科領域の細胞診(5)—非上皮性悪性腫瘍と上部尿路・腎腫瘍の剥離細胞像
山田 喬
1
Takashi Yamada
1
1獨協医科大学病理
pp.1067-1075
発行日 1979年11月20日
Published Date 1979/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202847
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Ⅰ.非上皮性悪性腫瘍の剥離細胞診
尿路上皮周囲に発生する非上皮性悪性腫瘍の発生頻度は低い。しかもある程度の大きさに成長しなければ尿路へ露出しない。しかし,時には尿中へ非上皮性腫瘍細胞が剥脱することがあるし,また最近,経皮的に穿刺吸引法によつて細胞診を行なう者が増えて来たので,一応は非上皮性悪性腫瘍細胞の形態を知る必要が生じて来た。多くは膀胱三角部(この部分および後部尿道はmesodermaloriginである)に発生するといわれるが,もちろんその他の尿路周囲にも発生する。一般に尿中に細胞が剥離したとしても,その量は多くないし,多くは壊死物質や炎症性細胞と共に剥離する(表面が潰瘍を形成している場合のみ剥離するから)。
膀胱の非上皮性悪性腫瘍の発生頻度はPower1)らによると第1表のごとくであるが,経験的にも,尿路周囲に発生する非上皮性腫瘍のうち最も多いのは筋原性腫瘍であろう。第1表におけるspindleまたはround cell sarcomaと記載されたものは,未分化な腫瘍か,あるいは現在ならばいずれかの組織発生的な名称が与えられるべきもので,統計対象としては意味がない。次は癌肉腫と粘液肉腫,リンパ肉腫,線維肉腫ということになるが,経験的には後二者の方が多いような気がする。
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