講座
泌尿器科領域の細胞診(3)—膀胱正常移行上皮細胞の形態とその非腫瘍性変化
山田 喬
1
Takashi Yamada
1
1獨協医科大学病理
pp.865-871
発行日 1979年9月20日
Published Date 1979/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202808
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Ⅰ.膀胱の正常移行上皮細胞
通常の尿のなかに移行上皮細胞が剥脱することは少ない。したがつて自然尿の中には移行上皮細胞がほとんどないのが正常像である。女性の場合は性器より細胞が混入するから,この限りでない。しかし,カテーテル尿や膀胱洗浄尿にはカテーテル挿入時に移行上皮細胞を剥脱させるから少なからず保存のよい細胞が採取される。
移行上皮細胞は種々の形態を示す細胞の混合であり,しかも従来扁平上皮細胞のように,その表層への分化に伴う形態の変化について明確に示す成書は少ない。それは膀胱の拡張,収縮に伴い二次的に変化するためであろう。一般に記載されている移行上皮層の形態は,原則として表,中,基底の三種の細胞より構成され,表層に行くに従つて大型化し表層細胞は広い細胞質を有し,二核,多核にこなることも稀でない。この細胞は下層の細胞を被うように配列しているので洋傘細胞umb-rellaの細胞という。重層扁平上皮のごとく表層で角化することはなく,中間層は細長く,腺細胞にやや類似であるがこれと異なる。基底細胞層は重層扁平上皮のそれと類似する(第1図)。
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