Urological Letter
腎の腫瘤性疾患に対する診断用装置の限界,他
pp.155,174
発行日 1978年2月20日
Published Date 1978/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202501
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41歳男子。家庭で球戯をしていて左足首を骨折した。彼の足首は折れ曲り,くじけた。整形外科医は骨折を認め治療をした。10日後に突然肉眼的血尿が出て,ただちに筆者の所に紹介された。
膀胱尿道鏡検査で出血は左尿管口からとわかつた。IVPとトモグラフィで直径ほぼ4cmの円形の病巣が左腎上極にあることがわかつた。いくらか透明に近いので嚢腫が疑われた。そのあと超音波で調べたところ充実性腫瘍らしいと思われた。次に両腎をCTスキャンで調べたところ,やはり左腎のは充実性腫瘍らしいということであつた。ところが腎動脈撮影では腫瘍血管像はみられなかつた。これらの所見について患者さんと話し合い,針生検や嚢腫からの吸引物の試験,あるいは試験的に開けてみることなどについて検討した。患者は,近い親戚の人が癌で生検のため針を刺されたあと死んだので,癌かも知れない自分の病巣に針をさされることについては非常に心配した。そこで筆者は患者に,腎およびその他の臓器の癌の生検でその針の経路に癌が拡がつた例は文献にも少ししかないことを話した。患者は開けてみる方を選んだし,筆者らもその時点の状態でこれに賛成した。鑑別診断としてあげられたものは,中に出血している嚢腫あるいは嚢腫を伴うか出血している腫瘍ということであつた。
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