交見室
潜在癌の治療,他
岡田 清己
1
1日本大学泌尿器科
pp.178-179
発行日 1977年2月20日
Published Date 1977/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202312
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本誌30巻11号の秋元成太先生の「前立腺癌の治療方針」に関して私見をのべさせていただきたいと思う。潜在癌は発見後無治療であつても期待生存率に近い,とする報告が多い。これらの報告の大部分は潜在癌を1つのグループとして予後を判定しているが,良好な予後であることは興味深い。すなわち,どんな型の潜在癌であつても発見後なんらの処置を加えなくてもよいとも考えられる。しかし,潜在癌を詳細に観察すると,少なくとも2型に分けられると思う。(1)限局した小さな腺癌,(2)前立腺肥大症腺腫に隣接した大きな腺癌,である。(1)の場合,Surgical margin(外科的切除線)にかかつていることは少なく,単発的であり,小さな病巣のことが多いので,この場合には完全に摘出できたと考えている。さらに組織学的にも悪性度は低い。剖検でしばしば認められる潜在癌はこの型であり,予後良好なことを示していると考える。われわれはこの第1型に対しては無処置のまま経過を観察している。(2)の場合,この腺癌は前立腺肥大症腺腫に隣接し,よく分化した悪性度の低い腺癌であることが多い。一見,腺腫が悪性化して腺癌になつた(このようなことを言うと病理学者から間違つているといわれるであろうが)とも思われる組織像を示す。多くの場合,癌は外科的切除縁までおよんでおり「とりのこし」を否定することはできないであろう。
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