講座
潜在意識PRについて(1)
村田 宏雄
pp.46-48
発行日 1959年3月10日
Published Date 1959/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201829
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保健婦の活動では,患者の療養生活を指導したり,保健衛生の知識を地域の人に広く普及したりする仕事が,可成り重要な部分を占めている.所説指導とか,PRとか呼ばれている仕事である.従つて指導とかPRの技術ということが,盛んに研究されている.だがこの技術の面で,極めて重要なことが応々忘れられ勝ちである.それはこのような仕事をする場合,説得ということが大切だという点である.
たとえば患者を指導する場合,知識さえあたえればそれで済むと思う人がいたら,これは大間違いである.少し仕事になれた保健婦の方なら、此の種の方法がいかに患者を指示通りの療養生活に入らせないものであるか,身にしみて痛感させられた経験をうんざりする程持ち合せている.PRの場合にしろ,同じことがいえる.単に知識を与えただけでPRのこと終れりと考えている人がいたならば,これはとんだ間違いだ.PRしたからには,折角PRした知識が実行に迄移されなければ,何にもならない.だが人間は知つていることと行動することとは別問題だといわれているように,知識を持つていたからとて実行にその知識を必ず移すものではない.トイレに行けば,手を洗わなければならぬことぐらい今日の常識だ.それにも拘らず駅の便所などでみていると,手を洗わないで出てくる紳士が意外に多い.寝る前に歯をみがいた方がいいことを知つていても,なかなか実行に移さないのも,このよい例である.
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