文献抄録
腎癌転移症例の腎摘の延命効果について
pp.734
発行日 1975年9月20日
Published Date 1975/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202029
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腎癌で転移を証明されている場合に腎摘が適当か否かについては現在なお議論のあるところである。実際に腎癌の肺転移が腎摘により軽快消失した例がしばしば報告されているが,組織学的検索がなされていないのが普通である。また転移のある際の腎摘は,患者の臨床症状の軽減,術後の薬物療法を施行しやすくすることは確かである。著者らは1968年より1973年の間に93例の転移を認めた腎癌を経験し,43例に腎摘を施行,50例は腎摘せずに臨床経過を観察してその延命効果について考察している。症例は男性70名,女性23名である。年齢は23歳から77歳の間で,腎摘群の平均年齢54.3歳非腎摘群は54.8歳である。転移巣については,肺転移のみ44例,骨転移のみ27例,肺・骨転移合併は12例,残りのものは7例がリンパ節,その他の臓器・組織の転移例となつている。
以上の患者について生存平均月数をみると,腎摘群では11.3月で非腎摘群では7.9月となる。両群を加えた全体の平均は9.5月となる。骨転移のみを呈した症例群についてみると,腎摘群では平均生存月数は16.1月で,非腎摘では10.6月となり,明らかに腎摘群の延命効果が認められる。しかし,肺その他軟部組織転移群についてみると,腎摘群では平均7.9月で非腎摘群は平均5.4月とその差は極めて少ない。
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