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はじめに
膵臓に由来する嚢胞の40〜50%は仮性嚢胞で,急性膵炎の代表的な後遺症であり,また,慢性膵炎の多くにも仮性嚢胞の形成がみられるといわれる1)。さらに,外傷も成因の1つとして重要で,膵仮性嚢胞患者の10〜15%に腹部打撲の既往歴が認められている2)。いずれにしても,膵周囲に逸脱した消化酵素によつて自己消化がおこり,周囲組織の壊死,出血が次第に広範囲に拡がつて強靱な炎症性被膜に包まれた腫瘤が形成される。嚢腫の増大する方向は腹腔へ向うことが多く,腹部外科の領域では日常的に遭遇し,それに対する診断技術は現在では普及しているが,時に,病変が後腹膜腔へ進展し,腎周囲に嚢胞が形成され増大する場合には,原発性の泌尿器科的疾患とまぎらわしくなることがある。元来,腎およびその近傍における種々の腫瘤,特に嚢胞性疾患の鑑別診断はむずかしい場合があり,しかも,膵仮性嚢胞の後腹膜腔への増大自体が比較的稀であるだけに,膵炎の徴候を具えていない症例では,殊更診断に難渋することが多い。欧米では,このような誤診の経験を述べた報告が時折みられるが,本邦ではこれまであまり言及されていないので,腎腫瘍と疑われたわれわれの経験例を紹介する次第である。
This 46 year old male government employee with past history of severe contusion at left hypochon-drium during bayonet fencing and iron bar gymnastics, was admitted to the Department of the First Internal Medicine of Niigata University on January 11, 1974 complaining a mass at left hypochondrium and slight lumbago for 1 month duration. X-ray examination revealed a large mass with calcification at left flank, replacing the left renal pelvis down with deformation, suggesting left renaltumor, and was referred to the urological department.
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