交見室
ガンとガンもどき,他
加藤 哲郎
1
1秋田大学
pp.548-549
発行日 1989年6月20日
Published Date 1989/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205011
- 有料閲覧
- 文献概要
本邦では泌尿器癌の中で膀胱ガンが最も頻度が高く,それだけ関心も大きい。1970年代の大阪における疫学調査を基にすると,男子10万人当たりの発生率は5.2であり,前立腺ガンの3.1や腎ガンの1.5に比べて明らかに多い。ところが死亡率となると膀胱ガン2.4,前立腺ガン3.0,腎ガン2.1と差はなくなる。三者とも発生率は漸増傾向にあるが,死亡率は後二者が増加しているのに対して膀胱ガンは横ばい状態にある(大野良之,他;臨泌,38:555,1984)。最近の人口動態資料をみても,この関係は変わらない。膀胱ガンは治しやすい病気なのだろうか。
衆知のように膀胱ガンと称されるものの約70%は表在性乳頭状腫瘍であり,これらは浸潤性に進展することもなく,したがって生命を脅かすこともない。稀に—その頻度は10%以下とされる—浸潤癌に移行する例があると言われるが,これは初診時検査の不備によるものか,あるいは別種の腫瘍が発生したものかもしれない。ともあれ膀胱ガンといってもその大半が「ガンもどき」であると認識すれば,上述の疫学資料も納得できる。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.