特集 現代医学・生物学の仮説・学説
2.分子生物・遺伝学
ガン家系
馬塲 正三
1
,
小里 俊幸
1
,
落合 秀人
2
1浜松医科大学外科学第2講座
2栃木県立がんセンター外科
pp.470-471
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900611
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概説
ガンが家族内に集積する場合,同じような生活環境の影響もあるが,明らかに遺伝性を有するとされるときこの家系を一般的にはガン家系と称する。ガン家系は多くの種類の癌で認められており,古くは100年以上も前に乳癌の家系内集積が報告されている(Broka,1866)。癌の種類によって遺伝性の程度に強弱が認められる。たとえば遺伝性の強いものではretinoblastomaが,弱いものでは食道癌があげられる。現在までに疫学的調査により遺伝性が明らかであるとされる腫瘍は50種以上数えることができ,今後も新たに発見されるものと予想される1)。ガン家系の遺伝形式は,メンデルの優性遺伝と劣性遺伝によるものがあるが,外科的対象となるのはほとんど優性遺伝性疾患であり,代表的なものとしてはfamilial adenomatous polyposis(FAP),hereditary nonpolyposis colon cancer(HNPCC),neurofibromatosis,multiple endocrine neoplasmaなどがあげられる。図1にわれわれが調査追跡中の,本邦において最も家系調査が詳細に行われたと考えられるHNPCC(cancer family syndromer:Lyuch typeⅡ)の家系を示す。
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