文献抄録
前立腺腫剔除後の射精管について
pp.104
発行日 1968年2月20日
Published Date 1968/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200343
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前立腺被膜下剔除後の射精管の様子については既に古くThompson-Walker,Wilhelm等により述べられているが,術前術後の精嚢腺,射精管の状態についてレ線学的に追求した業績は殆んど見当らない。そこで著者は恥骨上式前立腺剔除術を施行した56名の患者について術前後の精嚢線撮影を試み,精嚢腺の状態,射精管口の閉塞の有無について検討した。著者の行なつた方法は術前に両側の輸精管に静脈用のナイロン管を10cm程挿入して溜置し,一端を皮膚に固定する。
このナイロン管より45%Hyp-aqueを入れて術前および術後7日より3カ月後の精嚢腺撮影を行なった。その結果について見ると術後第1週目の撮影においては全例に造影剤の前立腺剔除腔への流出を認め,剔除腺腫に応じて前立腺腔の様子を明瞭に描出している。しかし第1週では溜置カテーテルがあるために射精管の状態は一部の症例をのぞいては不詳であつた。またこの時期では造影剖の膀胱逆流も少数にしか認められていない。3ヵ月後の撮影では殆んど全例に造影剖の前立腺剔除腔への流出あるいは多くの症例で膀胱内への逆流を認め,また射精管の状態を明瞭に描出し得た。著者は以上のレ線撮影によつて,前立腺剔除後においても射精管は正常に存在し,射精によつて精子は一時前立腺腔へ貯溜して後に一部の症例において精子は膀胱へ逆流すると考えられる。
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