講座
子宮剔除術
テ・リンド
1
,
河邊 昌伍
2
1ジヨンス・ホプキンス大学産婦人科
2新潟鉄道病院産婦人科
pp.29-32
発行日 1953年1月1日
Published Date 1953/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200250
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今より1世紀すこし前の1844に世界で最初の子宮剔除術がアトリーに依て行われた。当時は子宮剔除術は偉大な手術と考えられたが,今日では平凡な手技でしかない。此の手術は技術的には簡單であるが,腸,膀胱,尿管の様な重要臟器を損傷する危険がある。手術死亡率は成績のよい所で約1%で,死亡原因はアメリカでは大部分が肺栓塞である。
扨て,子宮剔除術の精神的影響は,特に若い婦人には強い。一体,妊娠を希望する婦人が子宮を失うことを恐れるのは当然であるが,子供を幾人も持つている婦人でさえも,多くは子宮をとらないで欲しいと云う。この様な子宮に対する強い執着は,子宮をとつた場合の影響について誤解をしているからである。即ち,肥満,容姿が惡くなる,不妊症になる,性的無能力になると云う心配である。従つて我々は前以つて,生殖機能と月経がなくなる以外には,精神的肉体的に何等変化が来ないことを説明する必要がある。アメリカの婦人は,特に,この手術の後に肥満するのではないかと心配する人が多い。然し,子宮剔除術によつて,たとえ卵巣を一緒にとつた場合でも,身体の新陳代謝には何等影響がない。
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