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1 概念・病因
膀胱尿管逆流症(VUR)は,いったん膀胱内に蓄尿された尿が再度上部尿路に逆流してしまう現象を持った疾患で,先天性の尿路奇形でも最もよく遭遇する疾患の1つである。以前からこのVURは,原発性VURと続発性VURに分類されており,原発性VURは膀胱尿管移行部の解剖学的,機能的異常に原因がある場合とされ,続発性VURは神経因性膀胱や尿道疾患などによる膀胱内圧の上昇に起因する場合とされている。以前はVURの存在が尿路感染(UTI)を誘発し腎瘢痕や高血圧,腎不全を引き起こすと考えられ,積極的な治療を勧められていた時期もあったが,最近はVURとUTIの直接的な関係に疑問を投げかける意見も増加し,現在ではVURそのものは,いわゆる疾患として考慮されるものではなく,先天性に腎発育障害や形成不全,UTI素質などを持ちうる可能性のある状態として認識されるようになっている。
膀胱尿管移行部の膀胱内尿管は,壁内尿管と粘膜下尿管に分類され,排尿時には膀胱内圧によりこの部の尿管がつぶれて,いわゆるflap-valveを形作り逆流を防いでいるとされるが,原発性VURでは解剖学的にこの粘膜下尿管の距離が短く,flap-valve形成が不十分で逆流が出現してしまうと考えられている1)。また,この部の尿管には,特殊な筋線維が特徴的に走っており,受動的な逆流防止メカニズムだけではなく,たとえば膀胱尿管接合部では内尿管筋線維が縦走するように発達し,これが膀胱内に伸びて三角部のBell's muscleを形成したり,Waldeyer's sheathがhiatusでしっかり尿管を固定していることも,積極的に逆流を防止している理由と考えられ,これらの発育形成不全も原発性VURの発生原因と考えられている2)。
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