特集 泌尿器科診療ベストNAVI
Ⅱ 疾患・病態の診療
1 先天性疾患および小児泌尿器科疾患
尿管の先天異常
028 異所開口
鯉川 弥須宏
1
,
山口 孝則
1
,
柴田 舞子
1
1福岡市立こども病院感染症センター泌尿器科
pp.86-87
発行日 2013年4月5日
Published Date 2013/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413103097
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1 概念・病因
尿管異所開口は尿管の開口が通常の膀胱三角部にない状態の先天性の上部尿路奇形である。胎生4~8週時期の尿管芽の発生位置の異常より生じ,正常位置より頭側に発生すれば尿路の遠位側に,尾側に発生すれば近位側に開口すると考えられている1)。欧米の報告では女児のほうが男児に比べ2~3倍の頻度で,この女児の80%以上は重複腎盂尿管を合併している。一方,男児では約75%はsingle systemでの異常であるが,全体でみると70~80%は重複腎盂尿管を合併し,そのうち20%近くは両側性である2)。男児では膀胱頸部や後部尿道,前立腺部尿道,精囊腺,射精管,精管への開口頻度が高く,女児では膀胱頸部や尿道,外陰部,腟,子宮に多い。重複腎盂尿管の合併の場合は,下位腎所属尿管も異所性の場合が少なくなく,尿管芽は正常位置より尾側に発生している傾向が強いため,膀胱尿管移行部での膀胱内尿管,特に粘膜下尿管の長さが短めになり,加えて三角部の筋線維の形成にも未熟さが残存するため膀胱尿管逆流症(VUR)を合併しやすい。日本ではドイツ医学の流れの影響かThomの分類3)が汎用されることが多い。しかも頻度的には欧米ではdouble systemに合併するそのⅢ型が多いのに対し,本邦ではsingle systemでのⅠ型が多いといわれている。
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