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名古屋国際会議場で開催された癌治療学会において,シンポジウム「分子標的薬のバイオマーカー」で講演する機会を頂戴しました。他の用事があってシンポジウムには途中から参加したのですが,あまりの聴衆の多さに驚きました。私は次々演者でしたので,壁際の立ち見の聴衆をかき分けて前の方の席を探しました。次演者席も空いておらず,舞台の袖のスタッフ席に座らせてもらいました。流石に演者の真横から見るスライドは見にくく,首が痛くなりました。バイオマーカーは分子標的治療時代のキーワードです。治療効果を予測するバイオマーカーが存在すれば個別化治療の道が開けるのですが,腎癌領域では道半ばです。分野横断的な発表の数々に癌の個性がみえ隠れしました。この領域の関心の広さを物語る会場の混み具合と感じました。シンポジウムが終了し,新鮮な空気を求めて私は会場の中庭に出ました。名古屋国際会議場は癌治療学会には手狭であり,これが最後の開催という話を小耳にはさみました。
中庭は隣接する公園にまで伸びていて,結構広い土地が余っているのに気がつきました。さらに歩くと川が流れていました。ベンチに座って川面を渡る心地よい風を感じてまったりとしていました。やがて風がやみ,立ち上がろうとしたところ光をあびて銀色に輝くオブジェがベンチの傍にあることに気がつきました。そのオブジェは何を表現したものかはわからないのですが,くるくると回転しながら,目には見えない空気の動きを認識させてくれました。オブジェの「感覚」はヒトよりも鋭敏です。私が風を感じることがなくてもオブジェはより敏感に,風あるいは空気の動きに反応して動いていることがわかりました。作者は目にも見えず,肌でも感じられないものをオブジェに託して表現しているような気がしました。
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