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先日,敬愛する先輩より,「リュクサックの中には,逝かれた妻の写真を常に持参しているのだが,残念ながら天候に恵まれることが少なく,山頂の絶景を妻と楽しむことができない」ということを聞きました。小生は,その山での悪天候は,山神様が嫉妬していることが原因に違いないと考えました。そんな折,東北新幹線で車内誌「トランヴェール」に掲載された秋田県角館市から鷹巣町までの秋田内陸鉄道の旅とマタギの里阿仁町を紹介した『邂逅の森を旅する』の特集を読み,山神様嫉妬説が正しいことを確信しました。マタギは熊,青猪(日本カモシカ)などの狩りを生業とする男たちの集団です。ご承知のとおり『邂逅の森を旅する』は熊谷達也著による大正時代のマタギを主人公とした恋愛小説で,その随所にマタギの興味深い生活や慣習が描かれています。狩りで得られた獲物は,すべて「山神様の授かり物」であるという考え方をします。「山神様」は非常な醜女で,しかも困ったことに異常に嫉妬深く,彼らは山に入る際には「山神様」より外観の醜い「オコゼ」の乾物を持参し,これをお供えすることで機嫌をそこなわないように心がけていたとされています。この特集の中で掲載された「オコゼの乾物」の写真を見た瞬間,これだと思いました。晴天の登山を楽しむには「オコゼの乾物」を持参し,これをお供えすることで機嫌をそこなわないように心がけていたとされています。対策は簡単なことだったのです。先輩は,小生の「山神様オコゼ改善説」に同感されて,早速,オコゼの乾物を用意されたようです。いささか気になるのは,乾物にしたのは魚の頭部のみで,他の胴体はすでに先輩の胃袋内に納まっていることです。
さて,今月号は,「進行性腎癌に対する分子標的薬・薬剤選択ガイド」です。従来IFN-αやIL-2によるサイトカイン療法が標準治療でしたが,2008年,チロシンキナーゼ阻害剤が導入され,その2年後にはmTOR剤も承認され,本邦における進行性腎癌治療も分子標的薬時代に突入したと思われます。このような意味で今回の特集は時を得たものと考え,多くの読者に有益なものとなるものと考えます。また,カラーグラビア【珍しい外陰部疾患】は陰茎絞扼症であり,「交見室」にも2編の投稿があり,今後,ますます活発な意見交換がなされるものと確信しています。
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