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国内外の疫学調査により,頻尿,尿失禁などの下部尿路症状は加齢とともに頻度が増加し,QOLに多大な影響を与えることが報告されている。超高齢化社会を迎えるわが国にとって,下部尿路症状の原因を解明し,その予防と治療に邁進することは喫緊の課題と言っても過言ではないであろう。それでは頻尿や切迫性尿失禁はなぜ生じるのであろうか?
下部尿路機能障害の領域では,かつては下部尿路を支配する遠心性神経支配(運動神経)の機能異常に注目が集められてきた。膀胱内圧測定を行い,蓄尿時の排尿筋の不随意収縮が証明されれば,過活動膀胱ありと診断されてきた。しかし,2002年の国際禁制学会の提唱により,過活動膀胱の定義が大転換した。尿路感染症や膀胱癌などの他疾患が除外されれば,自覚症状に基づいて過活動膀胱の診断が可能となった。現在では,尿意切迫感を主症状とし,通常はこれに頻尿や夜間頻尿を伴い,場合によっては切迫性尿失禁を認めることがある状態を包括して過活動膀胱と定義している。過活動膀胱の診断のためのバリアが引き下げられたことで,泌尿器科専門医のみならず一般医家が過活動膀胱の診療に参加することが可能となり,医療連携や疾患啓発運動が裾野を広げつつある。過活動膀胱の定義変更の大きな功績は,過活動膀胱の診療機会を泌尿器科以外にも広げたことにあると思われる。しかし,その一方で,病的知覚とされる尿意切迫感の正体がまだよく解らないというジレンマもある。尿意切迫感は正常な尿意とどう異なるのか,なぜ尿意切迫感が発生するのか? 冷えると頻尿になることは誰しもが経験するが,なぜ冷えると頻尿になるのか? 最近の下部尿路機能障害の領域の基礎・臨床研究においては,尿意が発生する機序や尿意切迫感の本態を解明すべく,膀胱求心路(膀胱知覚)に関心がシフトしている。
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