書評
「胃癌外科の歴史」―高橋 孝 著/荒井邦佳 執筆協力
髙橋 俊雄
1,2,3
1東京都病院経営本部
2都立駒込病院
3京都府立医科大学
pp.510
発行日 2011年6月20日
Published Date 2011/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102424
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本書は,Billrothが1881年世界最初の胃癌切除に成功し,人体の消化管の連続性を離断し再建の可能性を初めて示した消化器外科最大の歴史的出来事から始まり,現在の胃癌の外科治療に至るまで,著者の歴史観「まなざし」で胃癌外科の歴史をたどった,他に類をみない興味ある書であります。
著者の胃癌外科に対する「まなざし」は主に胃癌のリンパ流,リンパ節郭清に注がれ,欧米でのMikulicz,Pólya,Navratil,Rouvièreらの業績,さらにわが国の三宅 速,久留 勝,梶谷 鐶らによって確立された系統的胃癌リンパ節郭清について,膨大な文献を基に哲学的とも言える詳細な考察を行っています。しかも,本書は決して固い学術書ではなく,物語調で書かれた大変読みやすい歴史物語であり,胃癌外科の歴史を知らず知らずに教えてくれます。
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