本との対話
—荒井 良著—タカシよ手をつなごう/—荒井 良著—貴への手紙
菅 龍一
pp.43-47
発行日 1971年9月25日
Published Date 1971/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906510
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
子どもを突き倒す父親 今から5年ばかり前だったろうか。ぼくは恐ろしいような厳粛な気持ちで,あるテレビの画像を見つめていた。そこには,ひとりの父親がふとんを敷きつめた室で,手の短い幼い子どもを突き倒し,そして自分も倒れてみせるという行為のくり返しが映し出されていたのである。ようやく歩きまわれるようになったその子が,もしも街頭で石につまづいて転んだならば,たいせつな頭を地面にぶつけるだろう。われわれなら転倒する瞬間に手をついてささえるのだが,その子の手はあまりに短いのである。頭部を保護するためには,身をよじらせるようにして身体の側面から転んでいくように訓練しなければならないのだった。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.