特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅳ 開腹手術
■腎部分切除術
071 CTで確認した腫瘍が見当たらない
小原 航
1
Wataru Obara
1
1岩手医科大学大学院医学研究科泌尿器科学講座
pp.200-201
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102319
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Q 腎部分切除術を開始した腎腫瘍の症例。腫瘍は,術前にCTで確認したが見当たらない(埋没型腎腫瘍に対する部分切除方法)。
[1]概 説
腎細胞癌に対する腎部分切除術は,これまで単腎や腎機能低下症例を中心に適応とされてきたが,腎摘除術と遜色のない部分切除術の長期成績が報告されたことで,対側腎機能に問題のない症例に対しても積極的に施行されるようになり,現在ではT1a腎腫瘍の標準治療となっている1)。さらに,近年の画像診断技術の進歩や検診の普及により偶然発見される小径腎癌症例が増加しており,さらには1~2cm前後の最小径腎腫瘍の発見も増加していることが推測され,実臨床では部分切除術の適応を検討する症例が増えている。
腎部分切除術後の局所再発率は一般に3%前後とされる。この局所再発や予後に影響する因子は病理学的切除断端陽性であり,これまで10mmのマージンを付けるべきとされてきた。しかし近年では,マージン厚は予後に影響せず,病理学的断端陽性ですら術後の予後には関係ないとの報告もある2)。腎門部あるいは埋没型の深い腫瘍に対する腎部分切除術において,最深部で十分なマージンを取ることは難しい。しかし,このことが癌制御を損ねるものではないことも示している。埋没型の深い腫瘍の場合,正常腎のマージンはわずかで十分である3)とも考えられる。
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