特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅱ 体腔鏡下手術
■後腹膜鏡下根治的腎摘除術
038 脾臓を損傷して,止血できなくなった
納谷 幸男
1
Yukio Naya
1
1帝京大学ちば総合医療センター泌尿器科
pp.113-114
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102284
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Q 後腹膜鏡下根治的左腎摘除術を開始した腎癌の症例。誤って脾臓を損傷してしまった。圧迫や縫合によっても止血できない。
[1]概 説
脾臓は非常にもろく,裂けやすい臓器である。
経腹膜的到達法では,十分に脱転せずに,腎を下方に牽引すると,脾臓にテンションがかかり,脾臓を損傷することがある。後腹膜到達法では,腹膜が介在するため,脾臓を損傷することは稀であるが,あり得ない話ではない。まず,腹膜を損傷しないことと,十分に腎の前面と腹膜の間を展開し,上極の剝離するラインを認識することが,損傷を起こさないために最も大切である。実際に脾臓を損傷した場合,その温存は困難なことが多い。これは,腹腔鏡手術におけるデータではないが,メイヨークリニックにおける13,897例の結腸切除術において,脾臓損傷は59例(0.42%)に起きている。そのうち45例,76%は脾臓摘出に至っている。また,脾臓の釘による貫通損傷において,腹腔鏡下に釘を抜き,凝固で止血し得たケースは症例報告のレベルであることより,脾臓を損傷し,凝固や,サージセルなどで止血し得ない場合は,躊躇せずに脾臓摘出を考慮すべきである。
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