特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅱ 体腔鏡下手術
■後腹膜鏡下根治的腎摘除術
037 誤って胸膜を損傷してしまった
納谷 幸男
1
Yukio Naya
1
1帝京大学ちば総合医療センター泌尿器科
pp.110-112
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102283
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Q 後腹膜鏡下根治的腎摘除術を開始した症例。術中,誤って胸膜を損傷してしまった。
[1]概 説
後腹膜到達法で胸膜の損傷が起きる確率は,諸家の報告によれば1~2%である。損傷がいつ起きやすいかを考えると,第12肋骨に沿わせて2本目のトロッカーを挿入する際と,外側円錐筋膜の切離を腎上極まで進めていく際の2点が挙げられる。横隔膜は12肋骨の周囲で欠損している部分(Bochdalek's triangle)があり,この大きさや位置には個人差があるが,この存在に気づかずに行っていると,胸膜を損傷しやすいと思われる。日本人111人の剖検例でBochdalek's triangleにつき調べたKawadaらの報告によれば,日本人の13.7%(B,D)は第12肋骨の先端より末しょう側で横隔膜が欠損しており,これらでは胸膜のみ露出している部分が多いので注意が必要である(図1)。
いずれも,起きやすいのは,横隔膜の欠損部分が大きく胸膜が露出しやすいケースであり,術前にCTで胸膜の位置を十分に確認することが,損傷を防ぐためには最も大切なことと考える。
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