特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
胃・十二指腸手術
脾臓を損傷した
前田 昭二
1
,
湯浅 鐐介
1
1前田外科病院外科
pp.758
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208659
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胃切除中の脾臓損傷は大網の結紮,切離を上方に向つて行う時,脾の前縁Margo arcusの下の方の突起部が大網の胃脾靭帯Pars gastro-liena—lisと共に過度に牽引され被膜が脾実質の小部分と共に剥離する形が最も多い.大網の処理に熱中する余り,その先の脾との接合部を意識しないと広範囲胃切除の場合にこの損傷は珍らしくない.
損傷程度の軽い場合は,まず損傷した部分の凝血を静かにとり除き,暫くガーゼで軽く圧迫した後剥離した脾実質をそつと元の位置に戻す.近くの大網に余裕があればその上に乗せ,利用出来ない時はSpongelやOxycelの小片を乗せてからガーゼ数枚を折りたたむ様にして圧迫する.そこは暫くそのままにして別の場所の手術操作を行い,なるべく時間をおいて閉腹前にガーゼを手前から順に丁寧に取り除くと殆んどの症例は止血している.直接創面をガーゼで押さえると,止血後ガーゼをとる時に再び創面剥離,出血が起こるおそれがあるので必ず何か介在物をおくべきである.
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