特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅰ 尿路内視鏡手術
■経尿道的前立腺切除術(TURP)
004 手術時間が1時間を超えてしまった
西田 智保
1
Takayasu Nishida
1
1愛媛大学大学院医学系研究科泌尿器制御学分野
pp.24-25
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102249
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Q 体積80gの前立腺をTURisPで切除中の症例。手術時間が1時間を超えてきたが,もう30分あればきれいに切除できそうだ。全身状態に変化はなく,脊椎麻酔はまだ効いている。手術を続行したほうがよいか。
[1]概 説
TURPは前立腺肥大症の手術術式としては,いまだgold standardである。大きな前立腺とは,推定容積が60ml以上の前立腺を指すことが一般的である1)が,近年の内視鏡,ビデオスコープの進歩により,大きな前立腺肥大症に対しても安全に手術可能になってきている。しかし切除量が多くなればなるほど,出血などの合併症は増加し,手術難度は高くなるのも事実である。大きな前立腺の切除を予定する場合,術者の十分な経験と自己血貯血などの準備が必要である。
近年多くの施設で電解質溶液下TUR(以下,TURis)が普及してきている。そのメリットとして,従来の非電解質溶液下TUR(以下,TUR)と比較して,術中,術後にNaの低下によるTUR反応をきたしにくく,またその構造上,漏れ電流による対極板部やシース部での熱傷がないことが挙げられる。さらにTURisBT施行時には神経反射が少ないとされる。しかし大量の生理食塩水が体内吸収された場合,肺水腫や脳浮腫,高Cl性アシドーシスなどが起こる可能性も指摘されている2)。
TURisPは,TURPと異なり電極が小さいが,切除重量あたりの手術時間はあまり差はないとされ3),2時間程度の通常の灌流によるTURisPであれば血液の希釈も問題ない。
今後多くの施設で,従来のTURに代わりTURisが導入されるであろう。
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