Student's Page 自由時間
自由時間/8時間,8時間
小川 紀子
pp.57-60
発行日 1955年11月15日
Published Date 1955/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909981
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人間は,生来「勝手気ままなもの」を持つている。つまり好きな時に好きなことをしたいという気持を常に持ち,しかも,それが出来なくて悩んだり不満を感じたり,結局「人間なんてっまらないもの」という定義を下し,ますます,過ぎゆく日々をっまらなくしている。もつとも,これは私の偏見かもしれぬ「人聞は......」などと,全ての人を対象として書くべきではないと思う。以後「私」とすることに決める。消えかけた記憶の中によく母が「時間が欲しい。もうこんな時聞?」などと言っていたのを思い出した。「時間の経っのは早いもの。」という言葉も,常に聞いていたような気がするが,ここの生活をするようになる迄は,私には,「時間」はそれほど気にならなかつたにちがいない。何故なら,先ずここに入学して,つくづく身に知らされたのは「時間がない。」ということだつた。入学願書に附随して,送られた学院紹介の中に,8時聞の勉強,8時間の睡眠,そして8時間の自由時聞,とうたつてあつたのを思い出す。「8時間の自由時間は」実に魅力的だ。8時聞も,自分の好きなことが出来るとは......。自分の机に向かつて読書をしたり,手芸をしている自分が遠くから想像されて,父母達から離れて全く一人になるのをむしろ喜んでいた私だつた。
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